多くのWebサービスやアプリで導入が進むソーシャルログインは、安全かつ便利な機能であるというユーザーの認知も広がり、もはや一般的な機能となりつつあります。
2019年9月19日には、Apple IDを用いてサイトへの会員登録やログインを行うことができる Appleでサインイン(Sign in with Apple) がリリースされ、顔認証の「Face ID」や指紋認証の「Touch ID」によるソーシャルログインが可能になるなど、進化しながらもますます身近な存在となっています。
本記事では、「日本国内ソーシャルログイン利用状況調査結果2020 ※1」の結果を踏まえながら、ソーシャルログインの導入が進んでいる背景、ソーシャルログインの最新動向や導入方法についてご紹介したいと思います。
※1 ソーシャルログイン利用状況調査2020:ソーシャルログイン・ID連携サービス「ソーシャルPLUS」を導入したサイトにおいて、LINE・Yahoo! JAPAN・Facebook・Twitter・Googleの5種類のアカウントを対象に、過去1年間(2019年2月~2020年1月)のソーシャルログイン利用状況調査を実施
ソーシャルログインの導入が進む背景
下記表は過去1年間(2019年2月~2020年1月)における「ソーシャルPLUS」利用中企業サイトでの、ソーシャルログイン利用ユーザー数と一人あたりの平均ログイン回数の推移です。(ソーシャルログイン利用状況調査2020 より)
企業サイトへの導入が進んでいる中、下記の表では導入サイトにおいてもユーザー数・ログイン回数が大幅に伸びていることがわかります。
このようにソーシャルログインの導入、利用が進んでいる背景にはどのような要因があるのでしょうか?
ユーザー・企業双方にとってメリットがある
ソーシャルログインの導入が進む背景として第一に挙げられるのは、ユーザーそして企業双方にとってメリットがある点です。
改めてユーザーメリット、企業の導入メリット、それぞれの視点で整理をしてみます。
ユーザーメリット
- 日常使い慣れているSNSアカウントの情報を利用して登録フォームを埋めることができるため、入力の手間を省き、登録のほとんどをクリック/タップ操作ですすめることができる
- サービス毎にID・パスワードを覚える必要がなく、再ログイン時はボタン一つでログインできる
- プロバイダが提供する二段階認証を利用することで”なりすまし”や”不正利用”のリスクを軽減することができる
企業がソーシャルログインを導入するメリット
- 会員登録の手間を軽減することで会員登録時の離脱率が減る
- ユーザーの許可をもとに、プロバイダが保有するユーザー情報の一部を得られる(※プロバイダによって異なる)
- ユーザーはサービス毎にID・パスワードの管理をする必要がないため、再ログインのハードルが下がり再訪率が上がる
- パスワード再発行やログインできないという問い合わせが減る
- プロバイダが提供する二段階認証を活用できるため、セキュリティ対策へのコストが減らせる
このようにソーシャルログインは、ユーザーのログイン・会員登録の手続きを簡単かつ安全に提供することで、自社のWebサービスやアプリを安心して手軽に利用してもらうことに繋がっており、ユーザー、導入企業双方にとってメリットがあることがわかります。
IDマーケティングのニーズの高まり
また、ソーシャルログインは、昨今の潮流でもある”ID”をベースにしたマーケティングにおいても注目されています。
IDをベースにしたマーケティングとは、オンライン・オフラインの隔たりなく、各プラットフォーム、POSやCRMなどの自社データベースに分散したユーザーデータをIDベース、つまり人をベースに統合し活用することで、シームレスかつ一人ひとりにマッチしたユーザー体験の提供を目指すものです。
GDPR、SafariのITP(Intelligent Tracking Prevention)、GoogleよるChromeのサードパーティCookieの制限、個人情報保護法の改正など、ユーザーのプライバシー保護を目的にCookieの働きを制限する動きをうけ、ユーザーの許可のもと取得したファーストパーティーデータを統合・活用するIDマーケティングは、その重要度を増しています。
ソーシャルログイン技術の活用は、プロバイダが保有するユーザー情報をユーザーの許可の上取得し、これらのデータを自社の顧客情報と統合し活用することで、IDベースのマーケティング基盤構築に繋がっていることからも注目されています。
「LINEログインとID連携」がその代表的な例ですが、これについては後述したいと思います。
ソーシャルログイン利用状況調査2020
多くのサイトで導入が進むソーシャルログインですが、具体的に企業サイトにおけるソーシャルログインの利用状況をみてみましょう。
弊社フィードフォースが実施したソーシャルログイン利用状況調査2020(※1)では、過去1年間(2019年2月~2020年1月)で最もソーシャルログインに利用されたアカウントはLINEで64.5%という結果となりました。続いてYahoo! JAPANが17.6%、Facebookが6.5%、Googleが6.3%、Twitterが5.1%となっています。
前回の2019年調査時の結果でもLINEは56.1%でトップでしたが、今年はさらに8.4ポイント増加し、LINEログインのニーズがさらに拡大していることが伺えます。
また、ソーシャルログインを利用するデバイスの割合はモバイルが約9割を占めることがわかりました。
本調査結果の詳細は、無料PDF資料「最新動向をおさえる!ソーシャルログイン利用状況調査2020」にて確認いただけます。過去1年間の企業サイトにおけるソーシャルログイン実装状況や、業種・業態・商材ごとの活用トレンドをまとめていますので、是非ご活用ください。
※1 ソーシャルログイン利用状況調査2020:ソーシャルログイン・ID連携サービス「ソーシャルPLUS」を導入したサイトにおいて、LINE・Yahoo! JAPAN・Facebook・Twitter・Googleの5種類のアカウントを対象に、過去1年間(2019年2月~2020年1月)のソーシャルログイン利用状況調査を実施
LINEログインの利用率が拡大
様々なサイトでソーシャルログインの普及が進む中、昨年度に引き続き、LINEログインの利用率が伸びていることがわかりました。
その背景には、多くのユーザーが日頃スマートフォンで利用しているアカウントであること、また、ユーザー毎に最適化されたOne to Oneメッセージ配信など、LINEのプラットフォームを通じて満足度の高いユーザー体験を提供したいという企業ニーズにより、LINEログインの導入が進んでいることが挙げられます。
LINEログインとID連携で”人をベース”としたコミュニケーション
LINEログインの特徴的な機能とID連携についてもう少し詳しくご説明します。
LINEログインを実装しているWebサイトでは、新規会員登録時、LINEログインの機能であるLINE Profile+(フォームアシスト機能)とオートログイン機能を組み合わせることで、2,3タップで会員登録を完了することができます。さらに、会員登録のフローの中で、企業のLINE公式アカウントの友だち追加とID連携を完了することができます。

(画像引用:ソーシャルPLUS)
- オートログイン機能では、LINEアプリと連動して、IDやパスワードを入力することなくタップ操作のみで自社Webサービスにログインできます。(LINEアプリ内ブラウザに加え、iOSのSafariやAndroidのChromeで対応。)オートログイン機能により、企業アカウントのプロフィールページやタイムライン、広告、メッセージから、ユーザー登録や購買などのユーザーアクションまで、最短の導線を用意することができます。
- フォームアシスト機能(LINE Profile+)では、予めLINEに登録しておいたプロフィール情報を会員登録フォームに自動でフィルインできるため、フォーム入力のハードルを下げ離脱を防ぐことによって、会員登録率を向上させることができます。
- ID連携では、LINEが保有するユーザー情報をユーザーの許可の上取得し、LINE ID(userId)と自社顧客データベース内の会員IDとを紐づけることができます。これにより、IDつまり”人をベース”に、自社会員の属性情報や購入履歴、閲覧履歴などCRMデータの活用を可能にし、LINEを活用したOne to Oneマーケティングを可能にします。
このようにLINEログインは、ユーザーの利便性を高めることで、特別なインセンティブを用意しなくても自然にOne to One コミュニケーションが可能な新規会員獲得につながっています。
LINEログインのオートログインでUX改善
オートログインは、新規会員登録施策として効果的であることはもちろん、既存会員の利便性向上にも効果を発揮します。
- LINEメッセージを見て気になった商品のリンクをタップすると、ログインした状態で商品ページに遷移し、そのままスムーズに商品の購入が可能。購入までの最短距離の導線を提供することができる。
- LINEトーク内のリッチメニューをタップするだけで、ログインした状態で会員ページや、会員証に遷移。会員向けのサービスをシームレスに提供することができる。
このようにオートログインは、LINEアプリと連動しながら新規会員獲得に繋がるだけでなく、大幅なUX改善や継続的なサイト利用、LINEを活用した企業と顧客との長期的な関係構築につながっています。
ソーシャルログイン最新動向
「Appleでサインイン」がリリース
2019年6月4日(日本時間)に開催されたAppleの開発者会議「WWDC19」の基調講演にて「Appleでサインイン(Sign in with Apple)」が発表されました。
「Appleでサインイン」とは、Apple IDを用いてサイトへの会員登録やログインを行うことができるソーシャルログインです。
Appleはかねてより、プライバシー保護やセキュリティ重視を全面に打ち出しており、「Appleでサインイン」においても、その思想が反映された設計となっている印象です。また、顔認証の「FaceID」または指紋認証の「Touch ID」が利用できることが特徴的です。
「Appleでサインイン」の特徴
- ユーザーは、登録時に設定するメールアドレスを「自身が持つ通常のメールアドレス(本物)」と「Appleが発行する一意でランダムなメールアドレス(使い捨て)」から選択できる※2
- 会員登録・ログインを通じて企業側が取得可能な情報は「姓名・メールアドレス(本物と使い捨て)」
- AppやWebサイトでのユーザーの行動履歴をAppleが追跡しない
- Appleでサインインを利用するアカウントは、すべて2ファクタ認証で自動的に保護
- 顔認証の「Face ID」または指紋認証の「Touch ID」が利用可能
- iOSアプリ上かWebのブラウザ上でのみ提供
- iOSアプリでの導入義務がある(条件つき)
※2「Apple でサインイン」を使用してアカウント作成する際、メールを非公開にする選択肢を選んだ場合は、一意でランダムなメールアドレスが作成されます。このアドレスを使用することで、個人用のメールアドレスのプライバシーを守ります。
ソーシャルログインの導入を検討しよう
ソーシャルログイン導入にあたっては、どのプロバイダを実装するかを多方面から検討しましょう。
- 各プロバイダの利用者数や利用者層
- ソーシャルログインで取得できるデータ
- 自社サービスとの相性
- 導入目的
- 導入方法
- 導入コスト
- 運用コスト
ソーシャルログインで取得できるデータ
以下の表は、ソーシャルログイン経由で取得できるデータをプロバイダ毎にまとめた表になります。各プロバイダによってソーシャルログインで取得できる情報が異なることがわかります。
ソーシャルログインを導入するには?
ソーシャルログインを自社で導入・実装するには、OAuth認証の知識をもつエンジニアが各プロバイダの仕様、APIを把握し、スクラッチで開発をする必要があります。
複数のプロバイダへ対応するためには、対応するプロバイダに応じて開発工数が増えるばかりでなく、それぞれのプロバイダの不定期な仕様変更にも随時対応していかなければいけません。
そのため、自社開発が難しい場合や、導入コストや運用コストなど費用対効果を検討した結果、外部サービス(ASP)を活用し導入するケースも増えています。
外部サービス(ASP)利用のメリット
- 複数のプロバイダに対応したソーシャルログイン機能を一度の開発で短期間かつ低コストで導入できる
- それぞれのプロバイダによる不定期な仕様変更にもサービス側で対応するため、運用コストが下げられる
- 新しいアカウントも容易に追加実装できる
弊社フィードフォースが提供するソーシャルPLUSでは、ソーシャルログイン機能を既存のWebサイトに手軽に導入することができる「ソーシャルログイン・ID連携サービス」を提供しています。ソーシャルログインの導入をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
調査結果の詳細は、無料PDF資料「最新動向をおさえる!ソーシャルログイン利用状況調査2020」にて確認いただけます。過去1年間の企業サイトにおけるソーシャルログイン実装状況や、業種・業態・商材ごとの活用トレンドをまとめていますので、是非ご活用ください。
(執筆:松元)