
・2018年9月7日:Amazon PayのQRコード決済について追記しました。
・2020年10月27日:越境ECの情報・最新事例を追加、全体的に内容を更新しました
スマートフォンの普及やユーザーの購買行動の多様化にともない、ユーザーの購買体験を向上させるために、安心かつ安全な決済フローをいかに簡略化するかということが、コンバージョン率の改善という観点からも重要となっています。
そうしたニーズに併せてPayPal・楽天ペイ・Yahoo! ウォレット・LINE Pay等数多くのID決済サービスが提供されています。
中でも今回はAmazon Payに注目し、Amazon Payの仕組みやメリットなどをまとめてみたいと思います。
Amazon Payとは
Amazon Payはログイン機能と決済機能で構成されています。Amazonのセキュリティを利用した決済機能を使うことで、ユーザーはAmazon以外のECサイトであっても、Amazonアカウントに登録済のアカウント情報(購入者情報やクレジットカードによる決済情報)を利用して、簡単かつ安全にお買い物をすることが可能です。

Amazon Payは2013年にUSでスタートし、日本では2015年5月にサービスが開始されました。かつては「Amazonログイン&ペイメント」という名称でしたが現在では「Amazon Pay」に統一されています。
日本では提供開始から5年で、導入事業者は1万社を超え※1順調に拡大しています。
※1:通販新聞社 / 【事業責任者に聞く 「アマゾンペイ」の現状と今後㊤】 開始5年目で1万社超が導入、ゲスト購入落ち改善の新機能も順調
Amazon Payの導入メリットとは?
ではAmazon Payを導入するメリットについて、ユーザーと事業者に分けて具体的にご紹介します。
ユーザー側の3つのメリット
ユーザーにとってのAmazon Payを使う最大のメリットは“手軽さ”と“セキュリティの強さ”ではないでしょうか?Amazon Payを使う上でのメリットやできることをご紹介します。
①Amazonアカウントがあれば簡単に決済や会員登録手続きが可能
Amazon Payでは、個別のサイトの会員登録を行わずにAmazonアカウント情報を利用してゲスト購入ができます。オンラインショッピングでAmazon Payを利用する場合は、決済まで最短2クリック。通常の購買のフローを考えると、圧倒的に短縮されますね。
また、Amazonのセキュリティシステムでクレジットカード情報が管理され、導入事業者には伝わらないため、安心・安全に決済ができます。
※Amazon Payでの決済履歴はAmazon Payのサイトにログイン後「注文履歴の確認」タブから確認ができます。詳しくはヘルプページで確認ができます。
ECサイトで会員登録をする場合でも、Amazonのアカウント情報を連携(Amazonアカウントでログイン)することで、簡単に登録・ログインが可能です。
(参考)二段階認証とは?アカウントの不正利用を防ぐためにやっておくこと
②実店舗でもAmazon PayでQRコード決済が利用可能に
2018年8月からAmazon Payスマートフォン決済を利用して、実店舗での決済ができるようになりました。Amazon Payで決済可能な店舗では、スマートフォンアプリのAmazonショッピングをダウンロードしていれば、特別な登録をせずにQRコードを表示させることで支払いを完了させることができます。
③Amazonギフト券も利用可能となってますます便利に
これまでAmazon Payを利用した買物の支払い方法は、Amazonアカウントに登録されたクレジットカードによる決済のみでしたが、2020年6月にはAmazonアカウントに登録されたAmazonギフト券の残高を使った支払いが可能となり※2、ますます便利になりました。
※2:一部対象外となるECサイトがあります。Amazonギフト券がAmazon Payのお支払いでご利用可能になりました | 2020/6/1
事業者側の3つのメリット
Amazon Payを導入することで会員登録数・CVの改善だけでなくLTV(顧客生涯価値)の向上にも期待ができます。以下、事業者視点でのメリットを3つにまとめました。
①Amazonアカウントの普及率の高さ
Amazon PayはAmazonアカウントを持っていれば、誰でも利用できます。
ニールセン デジタルコンテンツ視聴率(Nielsen Digital Content Ratings)の2020年4月のMonthly Totalレポートによると、オンラインショッピングにおいてPCとモバイルの重複を除いた「トータルデジタル」で最も利用者数が多かったのはAmazon。5,253万人が利用しているとのことでした※3。

図表を見ると、日用品から家電製品など取り扱う内容も多岐にわたり、購入者にとってAmazonショッピングがいかに身近な存在であるかが伝わる結果ですね。Amazonアカウントの普及率の高さからいっても、Amazon Payを利用してログインのメリットを享受できるユーザーが多いことが分かります。
※3:MarkeZine『「利用者数」1位はアマゾン、「利用回数」1位は楽天市場 ニールセン デジタルが、EC利用状況を調査』
②決済までのフローを短縮することでコンバージョン率の改善が見込める
従来、オンラインでお買い物をするには各サイトで「会員登録」を行い、購入者情報・決済情報など購入までのステップをいくつも用意する必要がありました。さらにそれぞれのECサイトでユーザー登録をすることでアカウントの管理が必要になります。
Amazonのアカウントを利用してゲスト購入や、会員登録やログインができるECサイトでは、フォームでの離脱を防ぐ効果があり、結果としてカゴ落ちやコンバージョン率の改善が期待できます。

サブスクリプションモデルとの親和性が高く、LTV(顧客生涯価値)の向上につながる
Amazon Payの効果は新規顧客獲得だけではありません。サブスクリプションモデルにおいては、長期継続購入によるLTVの高さが重要となります。2回目以降の支払いもAmazon Pay経由を選択し、都度支払いの手続きを省略することで継続率アップに貢献し、LTVの改善に繋がります。また、長期継続利用していると登録情報の変更が発生することもあるでしょう。この場合、ユーザーはAmazonのアカウント情報を変更するだけで済みます。各サイトでの変更処理を行う手間が省けるだけでも、離脱率の減少が見込めます。
以下はサブスクリプションモデルで運営している2社の導入事例からの特に改善されたポイントを引用させていただきました。
以前、携帯キャリア決済がメインの支払方法だったころは、(携帯端末を切り替えるタイミングが多い)2年間で「FODプレミアム」をやめてしまう利用者が圧倒的に多かったんです。そのため、LTVも固定化されていましたが、こうした状況は「Amazon Pay」の導入後、劇的に変わりました。
- Amazon Payを導入した結果、すぐにCVRが約50%改善しました。その後、定期購入のお客様数も伸び続け、1年半前と比べると月商規模は3倍以上。
- Amazon Payは、Amazonアカウントで購入できるんだという安心感をお客様に提供できるので、結果的にシンプルな購入フローで注文が完了します。そのため、CVRの伸びが、継続率とLife Time Value(LTV)の向上につながっていると思います。
③Amazonの世界水準のセキュリティによる決済システムを利用できる
ユーザーがオンラインでお買い物をする際、最も気になる点の一つがセキュリティではないでしょうか?Amazonが提供する世界水準のセキュリティによる決済が利用でき、かつ、毎回カード情報を入力する必要がないとなれば、決済に係るハードルは各段に低くなるはずです。
事業者にとっても、Amazonのセキュリティで保護されることで不正注文の対策としても期待ができます。
Amazon Payの導入について
Amazon Payにかかる費用
決済手数料としてデジタルコンテンツ以外(物理的商品・サービス等)が4%、デジタルが4.5%がかかります。初期費用・月額費用・振込手数料が無料、トランザクション料は不要となります。
自社ECサイトに実際に導入するには?
Amazon Payを利用するにはAmazon Payでの審査が必要となります。
審査完了後、Amazon Payを自社ECサイトに組み込むには、環境により異なりますが、大きく分けて2通りの方法があります。
- Amazon Pay認定パートナー以外のシステム会社・自社開発で組み込む場合は、システム開発が必要となります。
- Amazon Pay認定パートナーを利用している場合は審査通過後、各パートナーで用意されているテンプレートや機能を利用できるので、簡単な設定切り替えで導入ができます。
ECプラットフォームを利用している場合は、Amazon Pay認定パートナーなのか、またAmazon Payの導入方法についてもパートナーによって異なりますので確認してみましょう。
越境ECでの導入も可能に
これまで日本のAmazon Payが導入されているECサイトで決済に利用できるアカウントは、Amazon.co.jpのアカウントに限られており、Amazon.comのアカウントによる決済は利用できませんでした。
2020年7月、越境EC対応サービス「WorldShopping BIZ」の決済方法としてAmazon Payが追加されたことにより、「WorldShopping BIZ」を導入したECサイトでは、海外(米国および欧州)のAmazonアカウントを持つユーザーも、Amazon Payを選択して決済することが可能となりました。
Amazon Payが越境EC対応サービス「WorldShopping BIZ」と機能連携 | 2020/7/13
Amazon Pay導入事例
FUJII DAIMARU:新規顧客のうち8割がAmazon Payを利用
京都の地場百貨店「藤井大丸」では自社のECサイトへのスマートフォンからの利用が8割を超えるという状況で、スマートフォン対応を主軸にリニューアルを実施。そのリニューアルの際、Amazon Payを導入しました。
導入の背景には、高額商品の取り扱いがある中で、クレジットカードの不正利用の調査コストやリスクといった課題をAmazon Payで回避することが可能だということがポイントでした。
その結果、コンバージョン率は昨年対比で 10~20%アップし、新規顧客のうち 8 割程度の方がAmazon Payを選択したとのことです。
NOYES:スマートに決済できるAmazon Payの導入でお客様の動線が一変
NOYES(ノイエス) は、自社で製造するソファを販売するECサイトを2002年に立ち上げました。スマートフォンの普及により、検討はスマートフォン、最終的に購入する時はパソコンで行うというお客様が圧倒的に多かったそうです。
そこで高額商品のソファをもっと手軽に購入できる方法として2020年3月にAmazon Payを導入しました。
Amazon Payを導入後、お客様の動線が大きく変化。スマートフォンで検討後、そのままスマホで決済まで完了する注文数が45%増えたそうです。2020年5月には注文のうちの90%はスマホからとなりました。
NOYESでは、通常のAmazon Payに加えて、このWeb接客型Amazon Payも採用し、入力フォームに実装することで、より多くのお客様が簡単便利なAmazon Payの決済ができるようになったと感じられているそうです。

『Web接客型Amazon Pay』はフォームアシスト機能です。ポップアップやチャットなどの機能を使ってユーザーにスムーズな決済を提供できます
実店舗利用の決済に広がるID決済の可能性
Amazonには実店舗決済に関連したサービスが提供されています。特に印象的なものは「Amazon Pay Places」や「Amazon Go」のようにAmazonアカウントを利用した決済のステージがオンラインだけでなくオフラインにも広がっている点です。
「Amazon Pay Places」
Amazonは2017年7月USにおいて「Amazon Pay Places」という新しい機能をリリースしました。
Amazon Pay Placesとは、「Amazon Pay」を実店舗にも対応させたもので、参加する実店舗の決済をAmazonアプリで支払えるサービスです。
ユーザーはAmazonアプリを利用して、事前に注文と決済を行い、店舗では注文した商品をレジに並ばずに購入できる仕組みを提供するものです。(現時点では日本での導入は未定)
「Amazon Go」・「Amazon Go Grocery」
Amazonがかねてから進めていた未来型の店舗で、購入者はレジを通らずにお買い物ができます。2018年8月にはキャッシュレスコンビニ「Amazon Go」、2020年2月にはキャッシュレススーパー「Amazon Go Grocery」がUSで一般に公開され話題になりました。
利用するには「Amazonアカウント」と「Amazon Goアプリ」をインストールしたスマートフォンが必要で、カメラやセンサーを利用してお客様が棚からとった商品を認識し、購入代金はAmazonアカウントに登録済のクレジットカードに請求されるしくみです。
2020年3月には、Amazonは、Amazon Goで使われているレジなし店舗技術「Just Walk Out」を小売店に販売することを発表しました。システムの設置はAmazonが店舗を視察してからわずか数週間以内に完了するそうです。(現時点では日本での導入は未定)
「Amazon Cash」
Amazon Cashは2017年4月から提供開始されたサービスで、クレジットカードがない人でもAmazonアカウントを利用してオンラインでの決済が可能になります。
ユーザーは提携の店舗でバーコードを提示し、現金を支払うことでAmazonアカウントの残高にチャージすることができます。
さいごに
今回はAmazon Payの特徴とメリットを中心に、Amazonの決済サービスについて纏めてみました。
AmazonだけでなくLINE Payなどその他決済の領域においてもアカウントをベースとして、オンライン・オフラインの垣根を越えたサービスの提供というものが大きな流れとしてあるように感じます。
今後もアカウントをベースとした様々なマーケティングに関する最新情報をFeedmatic Blogでレポートしていきたいと思います。
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<参考>