LINEが提供する新たな法人向けサービス『API型LINE@(旧Official Web App)』が、2016年秋に本格ローンチされる。
LINEのアプリ上で、自社サイトのユーザ獲得やプッシュメッセージ配信までがシームレスにできる仕組みとして注目を集めている『API型LINE@』だが、具体的な機能やメリット、従来のLINE公式アカウントやLINE ビジネスコネクトとの違いなど、詳しいところはよくわからない、という方も多いのではないだろうか。
そこで本記事では、『API型LINE@』の仕組みや具体的な導入メリットをはじめ、既に多数の企業が導入している公式アカウントやビジネスコネクトとは一体何が違うのか、導入するにはどんな準備が必要なのかまでを、徹底的に解説する。
API型LINE@(旧Official Web App)を一言で表現すると
LINE社のコーポレートサイト上では下記の様に説明されている。
『Official Web App』は、自社のWebサービスとLINEアカウントを連携させ、LINEアカウントを起点に集客・アクション誘導・リピート促進まで、ユーザの行動をLINEアプリ上でシームレスに完結させることができる仕組みです。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2016/1480
『Official Web App』という名称から、アプリなのか?全く新しいサービスなのか?と想像される方もいると思うが、簡単に言ってしまうと、企業のLINE@アカウントでビジネスコネクト(API)が利用できるオプションである。つまり、企業のLINEアカウントの機能を拡張できるオプションと考えるとわかりやすい。
API型LINE@で具体的に何ができるのか
『API型LINE@』の構成要素となる機能は下記の4つである。

企業はこれら4つの追加機能を実装することで、自社のLINEアカウント上がAPI化され、4つの機能が有効化される。
各機能の概要は次のとおりだ。
- LINEログイン: ユーザのLINEアカウントの認証情報(登録メールアドレス・パスワード)を利用し、LINEアプリ内ブラウザで簡単に自社サービスの会員IDとユーザのLINEアカウントのID連携ができるだけでなく、ユーザは二回目のサイト訪問から自動的にログインされるようになる。
- 自動友だち追加:新規会員登録時やMyページ上からLINEログインと同時に企業のLINEアカウントへの友だち追加が行える機能。
- プロフィール+: 会員登録時や商品やサービスの予約・購入・問い合わせの際に入力するフォーム上で、あらかじめLINEに登録しておいた情報をユーザの意志に基づき簡単に利用・入力できる機能。
- メッセージAPI: LINEの管理画面を介さず、利用企業が保有・利用する外部システムと接続することで、特定のユーザに限定した情報発信や双方向のコミュニケーションを可能にする機能。
実際に『API型LINE@』を利用する際のユーザ導線イメージは下図となる。(友だち追加していないユーザの場合)
(大きな画像で見る)
- プロフィールページやタイムライン広告からサイト訪問
企業のLINEアカウントのプロフィールページやタイムライン広告からサイトに訪問。
※ 既に友だち追加されているユーザの場合は、LINEアカウントのタイムラインやメッセージを利用して誘導を促す形になる。) - LINEログイン
LINEアプリ内ブラウザで自動的にLINEログインされ、LINEの認可画面でユーザの同意を得た後に新規会員登録。
※ すでに会員になっている場合は、既存の会員IDとパスワードでログイン。 - プロフィール+
新規会員登録時には、プロフィール+機能を利用してフォームの項目を自動入力。 - 自動友だち追加
新規会員登録と同時に、友だち追加を行う。
以上の流れで新規会員登録と、ユーザの会員IDとLINEアカウントとのID連携が完了となる。
『API型LINE@』で、ユーザの会員IDとLINE アカウントのID連携までが完了すると、その後商品やサービスの予約・購入・問い合わせの完了通知や、特定の会員に向けたプッシュメッセージ配信をLINEのトーク上で行うことができるようになる。
API型LINE@を導入するメリット
『API型LINE@』を導入するメリットは具体的に何だろうか?ユーザ目線のメリットと企業目線のメリットをまとめた。
ユーザのメリット
- 会員登録や購入・予約などの際に、入力フォームへ簡単に個人情報を呼び出せる
- 一度ログインをすると、二度目のアクセスからは自動的にログインされた状態になる
- 重要な情報やクーポンなどをメールではなくLINEのメッセージで受け取れる
- サービスを利用する為の一連のアクションをLINE上で完結できる
企業のメリット
- ネイティブアプリを開発することなく、今あるWEBをそのままLINEアプリ上で提供できる
- 会員登録やログインが簡単になるので、会員登録率や再訪率の増加が見込める
- 会員登録時に自然な流れでID連携と友だち追加が行えるので、1to1でコミュニケーションをとりやすくなる
- LINE@アカウントでもメッセージAPIの利用が可能になる
ユーザにとって利便性が高いサービス提供が可能に
『API型LINE@』はユーザの新規獲得よりも、ユーザ体験の向上がメインの施策となる為、ユーザのメリットは顕著である。LINEアプリ内でユーザの行動が全て完結するだけでなく、LINEアプリ内ブラウザではオートログイン機能で二回目のアクセスから自動でログインされ、かつLINEアカウントの認証やフォーム入力が支援されるので、画面が小さいスマホでも非常に簡単に会員登録やログインが完了でき、より大きなユーザ体験向上が期待できる。
話は逸れるがさらに『LINE Pay』を導入すれば、支払いの選択肢が増える事はユーザのメリットとなり、デビットカードとして利用できるLINE Pay カードでの支払いもできるので、企業としてはクレジットカードを持っていないユーザも取り込む事ができる。
企業はセグメント配信や1to1のLINEメッセージ配信をより手軽に実施可能
企業のメリットの中でも、LINEのメッセージで企業が持つデータベースを活用したセグメント配信や1to1のコミュニケーションを実現したいというニーズは依然として非常に高い。しかし企業が上記を実現する為のMessaging APIを利用するには、今まで最低でもLINE ビジネスコネクト(月額50万円~)の契約が必要で、かつそれを運用するシステムの導入・開発の為にさらなる費用が必要だった。
既に発表された月額3万円の新プラン『LINE@プロAPIプラン』は『API型LINE@』を導入できるだけでなく、Messaging APIが利用できるようになるので、今まで費用面でメッセージAPIを含むビジネスコネクトの導入を見送っていた企業に加え、既にLINE@アカウントを運用している企業でも気軽にメッセージAPIが利用できるようになった。
※Messaging APIが利用できると、友だち追加済みかつID連携したユーザへセグメント配信や1to1のコミュニケーションなどが機能の開発および対応可能になる
従来のLINE公式アカウントとLINE ビジネスコネクトを活用した取り組みと何が違うのか?
既に多数の企業が導入しているLINE公式アカウントとLINE ビジネスコネクトを活用した取り組みでは、LINEログインとMessaging APIが既に利用できるが、『API型LINE@』との違いは具体的にどういった点があるのだろうか。
そもそもLINE ビジネスコネクトとは?
LINE ビジネスコネクトとは、Messaging APIの利用と、自社サービスの会員IDとユーザのLINEアカウントの連携により、自社のデータベースを活用して、セグメント分けしたユーザへの限定配信や1to1のコミュニケーションなどを可能にする仕組みである。
LINE公式アカウントとLINE ビジネスコネクトを活用した取り組みでは、LINE公式アカウントとして新規ユーザを獲得し、獲得したユーザとLINE ビジネスコネクトを活用してセグメント配信や1to1の精度の高いコミュニケーションを実現できる。しかし、セグメント配信や1to1の精度の高いコミュニケーションを取る為には、自社サービスの会員IDとユーザのLINEアカウントを連携してもらう必要がある。
ユーザが積極的にIDを連携しようと思ってもらう為には、ユーザにとってID連携をするメリットは多ければ多いほど良く、また連携する為のアクションもよりスムーズに行えるに越したことはない。それを解決できるのが『API型LINE@』なのだ。
『API型LINE@』はユーザのID連携率を高める
『API型LINE@』の機能として今秋提供開始予定であるプロフィール+は、新規会員登録等の各種フォーム上で個人情報を呼び出せる機能なので、特にスマホユーザにとってはフォームの入力が簡単になり大きなメリットとなる。
つまり、『API型LINE@』において、プロフィール+機能が提供されることで、LINE公式アカウントとLINE ビジネスコネクトを活用した取り組みよりもユーザがIDを連携するメリットが高まり、ID連携率を高めユーザとの1to1コミュニケーションなどがとりやすくなる。
これにより、企業はより多くのユーザへピンポイントの情報を届けることが可能となり、ユーザはニーズにマッチした精度の高い情報のみが届くことになる。
企業とユーザともにメリットがあり、デメリットが一つもない施策が『API型LINE@』なのである。
API型LINE@を導入する為に必要な準備
では『API型LINE@』を導入するにはどんな事前準備が必要なのだろうか。
導入検討段階で準備しておきたいことをまとめた。
- 自社データベースとユーザのLINEアカウントを連携してどのようなアプローチ、コミュニケーションをとりたいか具体案を考えておく
- LINEアカウント運用部署と会員登録に関連する部署で連携する
- API型LINE@のパートナー企業を選定する
- API型LINE@を含めた開発工数の見積もりを出す
4つの中でも特に大切なことは、1のLINEアカウントを使ってどんなことを実現したいのかを明確にしておくことである。具体的にこういう事を実現したい、実現することで今のこの数値がこれくらい上がる、もしくはこういう数値がとれるようになるので、運用方法を改善しながらその数値を高めていきたいなど、何をやるのか、どんな数字を追うのかを決めて運用を始めることが重要だ。
残りの3つは『API型LINE@』に限らず、サイトに改修が必要な際に準備することである。企業の規模が大きくなると、LINEアカウントを運用するマーケティングサイドと会員を管理するカスタマーサイドの連携が必要になってくる。
さいごに
手前味噌にはなるが、弊社のソーシャルPLUSは『API型LINE@』に完全対応しており、LINE@アカウントでも安心してご利用いただける価格で『API型LINE@』の導入を支援するサービスを提供している。他社のビジネスコネクトシステムの費用感では導入に至らなかった場合、まずは手軽に試せる価格のLINE@とソーシャルPLUSの組み合わせで検討していただきたい。
また、既にビジネスコネクトのシステムを導入している場合でも、LINEログイン・プロフィール+・自動友だち追加を部分的に導入支援することができるので、是非ソーシャルPLUSの『LINEログインオプション』を導入して、ユーザ体験の向上とともにセグメント配信や1to1のコミュニケーションをフル活用してみていただきたい。
(執筆:岡田)
(2017年7月5日更新)
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